「三度の飯より好き」なものが山ほどある自分にとって、食事の優先順位は本当に低い。
料理の上手な友人たちが見かねてご飯を作ってくれるとそのおいしさに感動するものの、ふだんの自分は、とりあえずおなかがいっぱいになりさえすれば味はどうでもいいようなものばかり食べている。食事を作る時間も、食べる時間ももったいないのだ。
自分の1回の平均食事時間は、5分ぐらいだろうと思う。
そんな自分がいつかは作ってみたいと夢見る料理があった。それは、以前「
ナミュールで魔女の末裔に会う」に登場いただいたお友達のボブさんの作った自作自演のビデオでを見て、あまりにもおいしそうで、しかも簡単そうだったからだ。
プーレ・オー・シコン、鶏とシコンのクリーム煮。
ね。おいしそうでしょう。
ボブさんは、たぶん自分の友達の男性の中ではたぶんいちばん料理がうまい。一度ボブさんにハムエッグを作ってもらったことがあったが、何の変哲もないハムエッグが夢のように美味しかったことを思い出す。異常なほど食べ物に興味のない自分であるが、あのハムエッグを毎日食べられるボブさんの奥さんのシエコさんがうらやましい。
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正月ぐらいは旨いものを作って食べよう、プーレ・オー・シコンを作ろうと思って、年末にスーパーで地鶏をさがすが手頃なものが見つからない。
そこで急きょ予定変更し、地鶏の代わりにキジを買う。少し前にFT日曜版に、イギリスの人気シェフRowley Leighのレシピが載っていたキジとシコンの煮物を思いだしたのだった。
<材料>
バター 75g
パンチェッタ 75g
キジ 1羽
白ワイン 200ml
シコン 3個
レモン 1個
シェリー酢 大匙1
砂糖 小匙1
言っておくが、パンチェッタもシェリー酢も、見たことも聞いたこともない。スーパーマーケットの中を必死で探す。あった〜、そう言う名前のものがふたつとも見つかった。信じられん。
<作り方>
鍋にバターを溶かし、パンチェッタの角切りをゆっくりと脂が溶け出しカリカリになるまで炒めます。パンチェッタを丁寧にフォークで取り除き、お皿に取り置きます。お鍋にキジを入れ、表面がきつね色になるまで炒めます。さらにバターを加え、キジの周りにさっき取り置いたパンチェッタを撒きます。白ワインを加えてふたをし、20分ぐらいことこと煮ます。
その間に、フライパンにバターを溶かし、縦に四つ切りにしたシコンを並べ、色づくまで炒めます。砂糖とレモン汁を加え、水分が完全に蒸発しかけたころ、シェリー酢を加え、シコンに絡めます。
キジを鍋から出し、脚を切り離し、胴体を半分に割り、シコンと一緒に鍋に戻し、数分煮て、最後にバターを加え、鍋を動かしながらキジに絡めます。
ふだんバターをほとんど使わない自分にとっては、驚異的なバターの使用量である。うはあ、健康に悪そう。でも1年に一度、正月ぐらいは許されるだろう。
お皿にキジとシコンをうつし、鍋に残ったソースをたっぷりかけて食べると、ちょっと荒削りだったけど、やっぱりふだんは自分の作るいい加減な料理とは違って、フクザツでなかなかウットリするような味でした。
食べている内に、がりっと音がして、キジの肉の中から散弾銃のかけらが2個出てきた。
自作の写真ではなく、FT日曜版に載っていた写真(笑)。