前々回ブログ「
試験のてんまつ(1)−砂漠の十字路」で、なんと中国古来の占術たよりに口頭試験の勉強をし、みごと(笑)合格した顛末をお話ししました。(あ、誤解を避けるために言うと筆記は落ちたのよ。だからも一度やり直し。)でもいくら能天気な私でも、のめのめと占いばかりをやって試験に挑むほど楽観的ではありません。この試験勉強中に、もうひとつ、ものすごい秘密兵器をみつけたのだ。
自分は普通の人の10倍ぐらい記憶力が悪い。
以前のブログには、
「そんなら人の10倍勉強すればよいのじゃ!」
と開き直って書いたが、今回は本当に時間がなかった。それに人の10倍も時間をかけていたら、税理士になる前に、定年退職年齢に達してしまうだろう。
自分の記憶力の悪さのルーツを手繰って行った時、小学校1〜3年のクラスメートだったサワグチさんという天才少女のことを思い出した。彼女は、教科書を丸暗記してしまうくらい記憶力が良いばかりか、体育や、絵や、音楽もずば抜けて上手だった。成績もオール5だという噂だった。(自分の方は、小学校1年の1学期の成績は今でも憶えているがオール3であった。)ある日、彼女が国語の時間の作文の中で、「私の記憶術」のようなノウハウを披露したことがある。
彼女の記憶術は非常にシンプルだった。それは、「心のノートに書き留める」であった。
それをきいた私は、「心のノートってどこにあるの!?」と思った。自分の頭の中にはノートらしきものはなかったし、どういう鉛筆を使って書き留めるのか見当もつかない。私はその後うん十年間、折にふれてはその言葉を思い出し、あいかわらず、「心のノートってなに!?」と自問していた。大人になるにつれて、「彼女は、比ゆ的な意味で言ったのだろう」と一見合理的な解釈をするようになっていた。でも、ごく最近になってようやく、彼女の心のノートが比喩ではなく、現実に彼女が見たり、字を書いたりできるものであることが分ったのだ。
****
口頭試問は、試験官の質問に一言で答えるのではなく、試験官が「○×について話しなさい」とテーマを与えて、それを5−10分ぐらいの時間でプレゼンしなくてはいけない。セミナーとかのプレゼンだと、パワーポイントスライドを見ながらできるが試験中は何も見ることができない。一回の試験でテーマを10個ぐらい出題され、それについて話せなくてはならない。
複雑なテーマを何十個と理路整然と頭にインプットし、それをまた、試験官の前で思い通りにアウトプットするのはけっこう骨だ。というか、これまでの自分の能力では絶対無理だ。
そんな時、奇跡が起こった。「心のノート」ならぬ「心の地図」という手法に出会ったのだ。
大昔買ったはいいが、忘れていた本、
の中にあったマインドマップという手法を試してみる気になったのだ。試してみると、この手法が、複雑な事象を整理して理解し、記憶し、アウトプットするための強力なツールであることが分かった。
これまでの私は、教科書を読みながら、教科書に線をひいたり、ノートに箇条書きにメモをとったりしたが、内容をさっぱりおぼえられなかった。それをきっぱりやめて、A4半分ぐらいの紙に、マインドマップを描きながら教科書や資料を読む。
すると、これまで全然理解もできないし、理解できても数時間もたつと全部忘れてしまう複雑な内容が、画像としてすっきり頭に入る。
すっかり嬉しくなってしまった私は、3日ぐらいかけて、100枚ぐらいのマップを作った。
もちろん、3日後に見直すと完全に内容を忘れてしまっているマップもある(笑)。
ところが、内容を忘れてしまった時こそ、このマップが本領を発揮する。つまり、本を読み直すのと違って、復習が数秒でできるのだ。そこで100枚のマップを見直すのに100分。つまり、100個の複雑なテーマを100分で復習するということが可能になる。
そこで手書きのマップの束を肌身離さず持ち歩き、ご飯を食べる最中も、スーパーのレジに並ぶ間もひたすら読み直した。そうするうちに、マップを持たなくとも、目を閉じるとおぼろげにマップの画像を思い浮かべることができるようになった。心のマップの中にはっきりしない所があると、紙のマップで確認する。こうやって記憶が強化されていった。
天才少女サワグチさんは、おそらく「心のノート」に直接書き留めた時点で、記憶にしっかりインプットされたのだろうが、私の場合はいったん紙にマップを描き、それを何度も見直しながら記憶にインプットしなおす必要があったのだ。
をうやって何度もインプットしなおしたので、試験当日は、試験管たちを前にプレゼンをする時も、心の中のマップを見ながら落ち着いて話すことができた。
ほんとうだってば。だまされたと思ってやってごらんなさい。
****
教科書にマーカーやノートに箇条書きが記憶しにくく、マップだと記憶しやすいのはどうしてなのか。多分前者では、時間の流れに沿って事象のつながりが頭にインプットされるのに対し、後者では空間的に事象のつながりがインプットされるためだろう。通時的と共時的と言ってもいいかもしれない。
JUGEMテーマ:
夢・目標