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旅とシンクロニシティ

このブログにもリンクを張らせていただいているお友達の老真さんのブログ「どこかの細道」に、最近「幻の美術館」「幻の美術館(2)」と題し、とてもとても不思議な話が掲載されていた。

秩父・越生にある「オッペ川」という風雅な名前の響きに以前から引かれるものがあって、老真さまはその近辺の山歩きを重ねていた。ある時ネット調査上で、今は廃墟になっている「オッペ美術館」なるものに行きあたり、その廃墟まで出かけて行く。一方、五月のゴールデンウィークに東松山を歩くつもりでネット調査をしていた時、原爆の絵で有名な「丸木美術館」に行きあたる。そして、この二つの美術館のオーナーが、共に広島の原爆の被害者で、兄と妹であったことを知る。(これだけ書くと簡単に聞こえるでしょうが、じっさいは色々な紆余曲折を経てここまで行きつく様子を、老真さん撮影の美しい写真を見ながらぜひ原文で読んでください。)さらにびっくりしたのは、丸木美術館のオーナーの妻、丸木俊さんの出身地が北海道の「雨龍(うりゅう)郡、秩父別町」であることだった。老真さまの実名は「瓜生(うりゅう)」、そして町の名に埋め込まれた「秩父」という名前。

この不思議な符合に対し、老真さまは淡々と、「偶然に出会ったいくつかの出来事について、そこに小さな共通点があると、それが何やら深層心理に関連したことではないかと、そのヒモ解きにときめく。しかし一方では、その共通点をただ単純に、無理やりに、一本のひもで結びつけて言っているだけにすぎないのかもしれない、と思うこともある。ともかくも、これをシンクロニシティと呼び、深層心理なのかどうかは別として、ま、人生はドラマ。ひも解きも、結びつきも、様々な絡みがあるから面白く、不可思議なのだ。」と結論しておられる。

さて、こういう不思議な偶然には、日常生活の中でよりも、日常から離れた旅という過程でより遭遇しやすいのではないだろうか?特に、老真さまの旅のように「ここからここまで歩こう」と言うだけの目的以外は、期待も思いこみも思い入れも目標もない旅において、人は無心になり、旅の過程で現れる様々なサインに対し心を開き、より敏感になれるのではないだろうか? そして下手な期待がないから、すべての出来事(良いことも悪いことも)同じように楽しめるのだ。

思えば老真様は、知り合った当時からこのいきあたりばったりの旅の達人だった。一番ぶったまげたのは、当時ベルギーに在住中、ベルギーとフランスの国境をまたぐ道を、全部通過してみようと計画されたことだった。(数えたことはありませんが、国境を超える道は100本以上あったのではないですか?)

「道に迷うのが好き」とか「冬には北へ、夏には南へ」という老真さま独特の旅の哲学は今でも自分の心の中にしっかりプリントされているが、自分が学んだのはこの「地図上の地点はきめるが、後は行き当たりばったりの旅」ということではないかと思う。そして、行き当たりばったりの旅では、びっちり計画された旅やツアーに比べて、はるかに面白いことに出会えると言う確信を強めた。

                    *

自分もことしの初夏から夏にかけて、週末を利用して車でいろんな所に一泊旅行をしたが、老真さんに倣い行先はすべて地図をにらんで「えいや!」と選んだところばっかりだった。ただ、目をつぶって選んだわけではなく、一応の選考ルールを設けようと思い、その日の風水で「吉」と出た方角にある場所を選ぶことにした。

ある週末は、ブリュッセルから真西に直進し海にぶち当たる地点のフランスの Le Touquet(ル・トゥーケ)の海岸で魚料理を食べ、別の週末は真南東の山岳地方にあるLa Roche(ラ・ロッシュ)でカヤックをし、また別の週末は真北に直進し北海にぶち当たるオランダのScheveningen(スケベニンゲン)の海岸でバンジージャンプ(笑)をした。それぞれの行き先において、後からいちおう目的らしいものを設けたのは、亭主のグリに説明が必要だったからであってべつにバンジージャンプをしたかったからでは決してない。

どれも地名以外は聞いたこともない場所だったので行くまでが不安だったが、風水のおかげもあってか毎回なかなかすてきな体験ができた。(とくにバンジージャンプは、まったく期待していなかっただけに、素晴らしい体験でした。これについては別の場所で書きたいと思います。)

さて、先週の月〜水曜日にスペイン・マドリッドに行く必要があり、それに先立つ週末をスペインで過ごそうと思った。マドリッドは気温が40度近いと聞いていたのでそこにとどまる気になれず、自分の憧れの巡礼地サンチャゴ・デ・コンポステラに行こうかとも思ったがかなり遠いので、サンチャゴに向かう巡礼路沿いの町の一つに行くことを考えた。サンチャゴに向かう巡礼路は、内陸を通る道と海岸べりを通る道と2つあり、内陸を通る道にあるBurgos(ブルゴス)に行こうかと迷ったが、海岸べりの道、真北のカンタブリア海岸にある名前も聞いたことのない町を「えいや!」と選んだ。金曜日の晩にマドリッドに着くとそこからプロペラ機に乗り、Santander(サンタンデル)というその町に着いた。

空港からのタクシーの運ちゃんが、たどたどしい英語で、
「今日はサンチャゴのお祭りだよ。夜の11時から海辺で花火が上がるよ。」
「サンチャゴって、あのサンチャゴ・デ・コンポステラの?」
「そうだよ。明日がお祭りの主日なのでもっとにぎやかになるよ。」
ほう、私の到着を、サンチャゴが鳴り物入りで迎えていてくれるようだ。幸先がいい、と思った。

ホテルに着いたのは夜の10時半で、なるほど11時になった時に外でぽんぽん花火が上がる音が聞こえた。表に出て見ようかとも思ったが、明日の朝早く起きたかったので、花火の音を安らかに聞きながらその晩は眠ってしまった。翌朝は早起きして、海沿いを歩いていると、ちょうど小さなボートが停泊していて、「Playa del Puntal(プンタル・ビーチ)まで往復3.5Euro」とあるのでそのまま切符を買って乗ってみる。ボートは10分ぐらいサンタンデル湾を航行した後、鮮やかなブルーの海に中に砂州のように突き出たそれはそれはきれいな、ワイルドな感じの砂浜に停泊した。ビーチに一軒しかないひなびてはいるがなかなか素敵なバールできんきんに冷えたビールとタパスを取っては、海岸で昼寝をし、少し冷たく澄み切った海で泳ぐという繰り返しで、その日も翌日もそのビーチで過ごしてしまった。結局サンチャゴの祭りも見なかったし市内観光もしなかった。変な観光客だ(笑)。

自分にとっては久しぶりの一人旅で、レストランやホテルで簡単な会話をする以外は、まったくの沈黙の2日間。太陽と海。至福の旅であった。愛用のSamsung Digimax A50は、海岸の砂交じりの潮風と太陽にイカレてしまったのか、海岸に胡坐をかくわたしの足の映像を撮影した後きゅうに動かなくなってしまった。「長い間、ごくろうだったね。ありがとう。」とDigimax A50に礼を言いながら、その最後の映像をおさめたSD CardとDigimax A50の亡骸を大事にブラッセルに持って帰った。



さて、ブラッセルに帰り、早速この映像を編集してYouTubeに載せる過程で、いつものようにバックに音楽を入れようと思った。自分の場合、たいてい映像を編集している段階で「あの音楽をいれたい」というイメージがわく。でも今回は何を入れたらいいのかわからなかったので、「何かスペインの音楽でいいのがなかったかな?」と思いつつ、CD棚にある「La Folia」というスペインの15−18世紀の世俗楽曲を集めたCDを取りだした。その時、となりにあったCDが偶然一緒に手の中にあった。見ると、亭主のグリが集めているアイルランド音楽のCDの一枚だった。タイトルが、「セビリア組曲―キンセイルからラ・コルーニャへの道」(The Seville Suite - Kinsale To La Coruna)。キンセイルは、自分も行ったことがある西アイルランドのとてもきれいな海辺の町だ。そしてラ・コルーニャは、前述のサンチャゴ・デ・コンポステラの北にあるスペインの海辺の町だ。でも、なぜ、キンセイルとスペインが関係あるんだろう。

グリにこのCDの説明を求めると、1601年に、アイルランドとイングランドの間に「キンセイルの戦い(The Battle of Kinsale)」と呼ばれる戦いがあり、スペインもアイルランドに協力して戦ったが、イングランドに負けてしまう。戦いに敗れたアイルランド人達は、船に乗りスペインのカンタブリア海岸に逃れ、ガリシア地方に定住した。そもそもガリシア地方には紀元前6世紀ごろからケルト人が定住しており、そのような背景でアイルランド人にとっても親和力のある土地だったのかもしれない。このCDはそれをテーマにした組曲だと言うのだ。「サンタンデルって地名、おれ知ってたよ。イングランドから逃れたアイルランド人達は、この辺にも漂着したんじゃなかったっけかな。」

CD「セビリア組曲―キンセイルからラ・コルーニャへの道 」の6曲目は、「ガリシアの海岸にて(The Coast of Galicia)」という題名だ。見知らぬ国の海岸に漂着したアイルランド人達は、どんな思いでこの海岸での最初の朝を迎えたのだろう。この曲は、アイルランド人のフィドラーやパイピスト、スペイン人のハープ奏者の混成グループによる素敵な曲だ。これを自分のビデオのバックに入れることにした。

                     *

行き当たりばったりの旅では、地理的に移動するうちに、不意に様々な記憶が錯綜する様々な時間の迷宮の中に取り込まれてしまうことがある。不思議なことだ。




JUGEMテーマ:旅行
 

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Comment

マリアさん、私のブログの事をとりたててくれてありがとうございます。僕の行動哲学は確かに行き当たりばったり。大体のコースは決めますが、乗り物、ホテルの予約はしない、寄り道はしても近道はしない、日が暮れれば出直す、等の効率の悪さを追及する事を旨としています。  
ベルギーの国境を跨ぐ道は確か200箇所くらいあったと思います。結局30箇所くらいの国境は越えましたが、それはあまりにも非効率で途中で挫折しました。あの頃はまだ若くて非効率の奥義を極めていなかったのです。
それにしても、マリアさんのバンジージャンプ、ちょっと想像に難いのですが、でもマリアさんならきっとジャンプの最中も呼吸と瞑想も整えているのだろうな・・・? 

| 老真 | 2009/08/04 12:17 AM |

まりあさん…久しぶりです^_^;病気の方は一進一退ですが毎日、何とか頑張っています。
まりあさんのYou-Tube見てみたくて探してみましたがわからなくて…
パソコンがないのですが、まりあさんのは携帯から見れるのでしょうか?
何て検索したら出てきますか?

| レイ | 2009/08/05 1:12 AM |

老真さま、

30か所ですか〜。すごい。そもそも、そんなことを思いついて、挫折したとは言え、実際に始めてしまっただけでもすごいですよね。凡人だったら200か所あると分かった段階でめげてしまったと思います。

バンジージャンプですが、老真さま、さすがご明察。飛び降りる直前に海の上に突き出たクレーンの上から空と100メートルぐらい下の海面を見下ろして深呼吸したときちょっと瞑想の気分でした。

| まりあ | 2009/08/05 3:22 AM |

レイさま

いつも拙ブログをみていただいて、有難うございます。携帯で見ていらっしゃったのですね。パソコンで見ると、ブログの中にビデオ画面が直接表示されているはず(笑)なのですが、携帯だとそれが表示されないのかも。
リンクをここにコピーしますので、コピペしていただくと、You-Tubeのページに行って、スペイン・サンタンデルのビデオに行くはず(笑)なのですが、ちょっと試していただけますか?

http://www.youtube.com/user/Amira336#play/all/uploads-all/0/1dHAzlWjlJc

それともSearchの所に、
Santander - 25 July 2009
とインプットしてみても出てくると思います。

早く元気になってくださいね。

| まりあ | 2009/08/05 3:36 AM |

リンクをコピーしていただきありがとうございました^_^;携帯から見る事がでしました。
Guri Swimmingは心が癒されました。バックに流れている曲♪普段こういう音楽は聞かないんですが画像も音楽も、ずーっと見ていたい聞いていたいと思いました…
Adeep Yorkshirf drivingの空と雲に吸い込まれそうになりながら見ていました。こんな雲、長い間見ていません心が癒されました…他のも見させていただきます。ありがとうございました。

| レイ | 2009/08/05 4:28 PM |

レイさま

コメントありがとうございます。
「心が癒される」だなんて〜。へなちょこカメラで撮ったへなちょこビデオなので、バックに入れた音楽の力が大きいと思います… 

最近ことばよりイメージや音楽の方が気持ちが伝わるような気がして。ブログの方をさぼってこんなことばっかりやってしまいました。

| まりあ | 2009/08/08 9:58 PM |

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