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夢の中で左に下る

みなさんは、子供のころ自分の右手と左手の区別がはじめてついた瞬間を憶えていますか?

自分の場合、幼稚園の初日に先生がいきなり「右側を向いて」と何げなく言った時に、どちらが右側か分からなくて大変困ってしまった。右側・左側と言う言葉は知っている。家に帰って母親に、
「右側ってどっち?」
と聞いたら、あきれたように、
「お箸を持つ手の方よ!」
と言われて、またこまってしまった。実際にご飯がはいったお茶碗を持って、食べはじめてみないとどちらの手にお箸を持っているかなんて分かりはしない。先生に号令をかけられる度に、そんなことをしているわけにはいかない。

今思えば、「右」とか「左」とかは、「目」や「手」や「足」とかと比べるともう一段抽象度の高い概念で、右手と左手の形が違っていればまだしも、左右対称に思われる体に右とか左の概念を結び付けるのはもうひとつ高度の作業だったので難しかったのかもしれない。

また、「右」とか「左」は一定の物や場所に結びつくわけではない。こちらを向いて立っている先生がお箸を持つ手は、自分から見るとお箸を持たない方の手だ。多分そんなことで混乱してしまったのだと思う。

それから間もなく、お茶の間で庭を見るように立っているたとき、そこにいた誰かに、もう一度どちらが右手か聞いてみた。その時自分が立っている位置と向きからは、お台所があるのが右側、廊下に続く扉のあるのが左側であった。それからというもの、どこにいても、幼稚園にいても、どちらが右か左かわからなくなった時は、人気のない春の午後に茶の間にたたずむ自分から見た台所と廊下の位置を眼に浮かべて、右と左を区別することにしたのだ。

それは、自分にとって右と左の概念が理解できたというよりも、右と左と言う決めごとをとりあえずも便宜上身につけるためのショートカットを思いついた感動的な瞬間であった。

***

こんなことを思い出したのは、先週、亭主のグリと、彼の故郷のアイルランド共和国と英国の北アイルランドとの国境に近いドニゴールの近辺を車で走っていた時だった。その時、自分の体の位置や向きによって変わる相対的な左右ではなくて、絶対的な左右の感覚が自分の中にあることに気付いたのだった。

ドニゴールのロック・エスクという湖のほとりの1860年代のお城を改造したホテルに日暮れ時に投宿し、翌日、湖のほとりまで下りてみたが、午後1時過ぎというのに夕暮時のように薄暗い。

以前、「水と夢」でも書きましたが、自分の場合、坂道を下って行くとものすごく美しい水辺に着くと言う夢を良く見ていた時期がある。今目にしているロック・エスクの水辺は、まさにその夢の中で見た水辺のようなうつくしさなのだった。



また、高所から突然ものすごく美しい渓谷の裂け目に青い水が見えると言う夢も見たことがある。ロック・エスクに近い大西洋岸に面したキルカーの入江はその風景にそっくりな非現実的な美しさなのだった。



夢の中の水辺や入江は、なぜかかならず自分の左下にあるのだった。キルカーからキリベッグの港に車を走らせながら、過去に観た夢を色々思い出してみる。夢の中の自分は歩いているか眺めているかなのだが、歩みや視線と言うなにかしらの動きないしは方向性がある。一連の登る夢はどちらかと言えば右に向かっており、一連の下る夢は左に向かっているのだった。

夢の中で右側は秩序や理性や社会を表象し、左側は無意識や混沌を表彰すると言われている。自分の夢にはこのルールがぴったり当てはまるような気がする。他の人々はどうなんだろう。もし人々の夢がすべて同じような構造をしているとすれば、それはなぜだろうか?

そして、今思い出す現実のロック・エスクの水辺は、自分の意識の中では、何故か左に坂を下ったところにあるし、キルカーの入江も、記憶の中で自分のはるか左下に見えているのだった。

もっと不思議なのは、大西洋岸を海岸線に沿って現実に車を走らせながら、自分が今「左側」に向かっていると感じていたことだった。自分は正面に車を走らせていたので、右にも左にも行っていない。

自分の視線とは関係のない、なにか絶対的な左と右という場所ができてしまっているようなのだった。これはどういうことなのだろう。またも、答えのないまま記事が終わる。

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