日本から仕事を探しに来たみっちゃんといっしょに、森に行くことになった。夕方の6時頃にみっちゃんのアパートに車で迎えに行き、それから30分ぐらいワーテルロー街道や、色々な森の中の道を通り抜け、畑や、野原や、村の細道をやっとこさで通り抜け、4月の終わりから5月の初めのごく短い間まるでまぼろしのように、ブルーベルと呼ばれる青い花で覆われる「ハルの森(Hallerbos)」に行く。まだ陽は高いがほとんどひとけはない。
私は森は大好きなのだが、花の咲いていない森の方が好きなのだった。緑だけの豊かな濃淡、ほとんど黒々とした緑から、青みがかった緑の影、茶色がかった緑が好きなのだった。好きなのは、色よりも匂いかもしれない。自分がこれまでに一番すごいと思った森は、
以前にもお話ししたがフランスのバルビゾン村の外れの黒々とした森だ。
花盛りの森は何だか不自然で怖い感じだ。バックに、自分が正直言ってあまり好きではないEnyaの音楽を重ねたのは、純正律でつくられたEnyaの音楽とブルーベルの森との間に何か両者に相通ずるもの、そこだけ空気の質が違う空間があるように思うからだった。