「
クロールがきれいに泳げるようになる!」と言う本を買ったのは、2004年の10月のことです。練習を始めた直後に、四十肩になり、次いで癌になり、その内に、ジム併設のプールが使えなくなり・・・と言ったことが続き、本を買ったがよいが、当然のことながらぜんぜん泳げるようになりませんでした。
昨年11月にプールが使えるようになったが、再びクロールの練習を始める意欲がなくそのままになっていた。それが、数週間前のある日、いつもやっている平泳ぎがふと生ぬるく感じられ、クロールの練習に再チャレンジする気になった。
この本は、バタ足のコツから、息継ぎのコツ、手の掻きのコツなど、順を追ってとても丁寧に説明している。
週末ごとに1時間ぶっ続けで、本に書かれている通りに辛抱強く練習していたら、先週とつぜん、体が水に乗り、手が水をつかみ、ものすごい(と思われる)勢いで泳げるようになった。運動神経の悪い自分がここまで泳げるようになったのは、やはりこの本の指導がとても優れているからだと思う。
こうなると病みつきです。ウィークデーにも残業しないで、プールに通ってしまう。
こんなふうに(笑)。
そうすると陸に上がっている時も、仕事で一息ついた時も、ベッドに入ってからも、心の中でがむしゃらに水をかいている自分がいます。
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強烈な悪夢はあまり見ない自分が、今朝は大変怖い夢を見て、それこそ暗い水の中をもがくように目が覚めた。目が覚めて夢で良かったと思った。でも何が怖かったのかなあと思いながら、思い出せない。嫌な夢の後味がが残っている。
会社に来ると、以前「
100点以外はダメなときがある」で話した上司のロニーが、私を含めたチームの20人を部屋に集めて、自分が癌にかかっていること、来週手術して6月まで療養することを告げた。
そこに集められたみんな(男も女も)あまりのことに、泣いてしまった。ロニーも泣いていた。次席のグンターだけは泣かないで、
「みんなロニーのいない間がんばろう」
と言ったのがさすがだった。
私が癌治療や試験の間ロニーがいつも元気づけてくれたことを、自分ががんがんケンカを売っておとなしいロニーのストレスを増やしていたことを思いだし、彼の癌は部分的に私のせいだと思い、悩む。
暗い水の中をがむしゃらに泳ぐことが、前回エントリーで申した、夢の中で泥道をがむしゃらに進むことと等価になっている気がする。泳ぐことは、自分にとって物理的であると同時に心理的な行為であるらしいのだった。
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30分から1時間の決めた時間内は、プールの隅から隅までびっちり休まずに泳ぐのが私は好きなのだが、亭主のグリは、四角いプールを丸く泳ぐ。
それも、片道はいいかげんな平泳ぎで、逆方向はボーフラのようなふわふわした背泳ぎだ。泳いでいたかと思うと、とつぜん、水の中でクルンとでんぐり返りを打ったりする。そしてまた、ふわふわ泳ぎ始める。
こんなふうに。(カメラを向けられて少しむっとしている。)
グリは予測不可能な泳ぎ方をしながら、必死で泳いでいる私の行く手をさえぎったり、ふわ〜と意味もなく寄って来たりするので、こちらは大変イライラさせられるが、たまに心がなごむ時もある。