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旧題「読書 この秘密の愉しみ」を改めました。
最近本当に読書をしていないので・・・
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歌声には何かパワーがあるらしい。忙しい1日の終わりに疲れ切った時、オペラのアリア、特にすんだソプラノのアリアを聴くと、自分の場合、夜遅くユーカリプタス・オイル入りの熱いお風呂に入ったのとほぼ同じ深いリラックス感が得られます。
亭主のグリは、クラッシック音楽の知識は皆無でバッハとショパンの区別もつかないが、高音のすんだ歌声が好きらしく、自分の好きな曲を集めた自作のカセットテープには、エンヤ、クリフ・リチャードの他に、ペルゴレージのスタバートマーテルやヘンデルのリナルドのアリアなんかがごちゃごちゃに入っている。ハードロックや、シェーンベルグなど不協和音系は受け入れられないようだ。
その中でヘンデルは、彼が唯一きちんと名前と生年月日を覚えている作曲家で、「おれが一番好きなクラウツ(*)」なのだそうだ。
(*) グリの発明したドイツ人を表す蔑称。ザウアー・クラウツを語源とするらしい。
*****
さて1742年4月13日は、ヘンデルのメサイヤの初演の日で、場所はなぜかアイルランドのダブリンであった。
初演の行われたコンサートホール(今ではファサードのみが残る)があったFishamble Streetでは、これを記念して毎年4月13日午後の一時からメサイヤの野外コンサートが行われる。
亭主のグリは毎年このコンサートをとても楽しみにしていて、毎年この日にほとんど日帰りで故郷のアイルランドに帰る。
2007年には、このコンサートに私も連れて行こうとして、ずいぶん前から飛行機やホテルを予約していたグリだったが、当日ブラッセルの空港の消防士のストでフライトがキャンセルになり、旅行もちょんであった。
2008年はグリの出張と重なりちょん。
2009年には、私の仕事が忙しかったためグリ一人でコンサートに出掛けた。午後1時過ぎにオフィスのデスクでサンドイッチをかじっている時、グリから電話がかかってきた。「ちょっときいて!」と言って自分の携帯電話をコーラスの方に向けたらしい。受話器からどっと聞こえる臨場感ある歌声に包まれ、一瞬オフィスにいることを忘れて陶然としてしまいました。脳ミソの温泉効果が得られました。
2010年は、やはりグリ一人で出かけることになったが、「今年は2時間の野外コンサートを全部ビデオに録画するんだ」と言ってしばらく前から大騒ぎだった。もちろん、貧乏人の私たちはビデオ録画機など持っていない。そこで、100EUROで買ったPENTAX社のカメラに、4GBのSanDiskのSDカードを装填し、ビデオモードでの撮影の仕方を教え、バッテリーも満タンにして持たせた。
朝、グリを車で空港まで送って行き自分は職場に向かう。仕事の合間に、「無事飛行機に乗れたかなあ」、「時間通りにコンサート会場に行けたかなあ」、「無事にカメラをビデオモードで回せたかなあ」なとど少々気になるが、便りのないのは元気な証拠と思いそのまま仕事を続けた。
午後5時、もうそろそろコンサートも終わったころかなと思う。いつもあんなに電話やメッセージや写真を送ってくるグリから何も便りがないのが少々気になる。そのまま仕事を続けて気がつくと午後8時。おかしい。何かあったのかなあと心配になる。
それから1時間ぐらい待つ。急に、雨が降ってコンサートが中止になったのかも、カメラの扱いを間違えて録画できずにがっかりしてるかも、録画した後でカメラを盗まれてがっかりしてるかも…!等と言う考えが次々とわいて心配になり、恐る恐る電話をかけてみる。
グリが電話に出る。何かすごく静かな所にいる。エキサイトもしていないし、がっかりもしていないニュートラルな声。でもまだ予断は許さない。こちらの心配を声に出さないように、さりげなく聞いてみる。
「どうだった?楽しかった?」
「うん、楽しかったよ〜」
「ビデオはちゃんと撮れた?」
「うん、ちゃんと撮れたよ。すごい映画になったよ」
ひとまずよかった〜。と心の中で思う。
「今どこにいるの? すごく静かだけど」
「ダブリンからコーク(グリの実家)に行く電車の中だよ。飛行機の中で、ベルギー人の女の人に声をかけられたんだよ。ジムで僕たちを見たことがあったんだって。航空関係の会議でダブリンに行くところだったんだ。」
そこで、グリはその女の人に自分がコンサートに行くところだという説明をしてFishamble Streetという住所を教え、携帯電話の番号も交換して、ダブリンの飛行場で別れた。女の人(ダニエルと言う名前だった)はそのまま自分の会議のあるホテルに行ったのだが、その日の会議がキャンセルになったため、グリに教えられたFishamble Streetに行くことを考えた。
ところがホテルがとてもその場所から離れていたこともあり、ホテルの人々はだれもFishamble Streetもヘンデルの野外コンサートのことも知らない。がっかりしている所に、ポーランド人のホテルのポーターが「私が知っているよ」と言って、丁寧に行き方を教えてくれた。そこでダニエルは苦労してコンサートの場所にたどり着いて、人混みの中でグリの携帯電話にテキストメッセージを送るのだが、コンサートに夢中になっているグリは気がつかない。
コンサートが終わり、ダニエルは、PENTAXのカメラで自分の顔を映してなにやらブツブツ言っているグリの姿を見つけた。2人はThe Lord Edwardという近くのパブに行き、ギネスを飲みながらコンサートの感動を分かち合った。(グリは調子に乗ってギネスを10パイント飲んだらしい。)その後、ダニエルは、「今日のお礼にお食事をご馳走するわ」と言って、同じパブの2階で、グリの大好きなシーフード・ディナーをおごってくれた。
これまでもグリは、ふとした偶然でとても素敵な出会いをし、文通やメールで深い長いお付き合いが続くことが多い。アメリカに行く飛行機の中で知り合ったペギーと言うおばあちゃんとは長い間手紙や写真の交換が続いているし、年末のフロリダ旅行の宿泊先で10分ぐらい話しただけのユダヤ系ニューヨーカーのビルや、向かいのパブで知り合った日本人駐在員の聡さんとも聡さんが帰任した後でも文通が続いている。こんな感じで世界中に何十人もの大親友がいるのだ。
「とても楽しかったよ〜。お天気もジンみたいにクリアーだったし。ヘンデルもすごかったよ。映画もすごいのが取れたし。ダニエルとたくさんお話をして、シーフードもおいしかったし…」
夜の電車のすこしゴトンゴトンという単調な音の混じる静寂の中に、ギネスを10パイント飲んですこしよれよれになってはいるが、幸せそうなグリの声が響く。
自分がこんなに心配するのは、何か自分の中に、グリが悲惨な死に方をしてしまうんじゃないかという恐れがあるからだった。理由は分からない。前世と言うものがあるとすれば、その時の記憶かもしれない。自分がグリを置いて旅行に行く時はそうでもないが、自分が家に残ってグリが旅行に出ると、旅先で変な目に会っていないかとても心配になる。だから、こんなふうに、無事で元気でいて楽しい1日を過ごせたと聞くだけで、ほんとうにしみじみ嬉しいのだった。
電話を切ってから、わたしも「よかった〜。よかったね〜。」と思いながら、安らかな気分で帰宅したのでした。
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下はグリがPENTAXのデジカメで撮影したコンサートのアンコールの部分。ハレルヤの部分で、指揮者やコーラス隊や観客が「ほっ!ほっ!」と両腕を上げる本当に可愛い野外コンサートです。最後に人びとが散って行った後に残ったグリの顔(お見苦しくて恐縮です)と、その姿を見つけてくすくす笑いながら後ろを通り過ぎるダニエルの顔が映ってます。
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